国立社会保障・人口問題研究所は11月29日、社会保障給付費が2010年度に初めて100兆円を突破したと発表した。2009年度比3兆6272億円(3.6%)増の103兆4879億円だった。一方で社会保険料や公費などの社会保障財源は10兆6714億円(8.7%)減って112兆1707億円となった。
高齢化と医療技術の進展で増加が続いているほか、2010年度は子ども手当の創設で給付が膨らんだ。国民1人当たりに換算すると80万8100円だった。
内訳は、年金が52兆4184億円(50.7%)を占めており、医療が4.8%増の32兆3312億円。子ども手当を含む「福祉その他」が8.4%増の18兆7384億円だった。
今回からは病院のような設備整備費など個人に直接渡らない支出や就学前教育費などを含めた「社会支出」も同時に公表されている。経済協力開発機構(OECD)の基準によるもので、国際比較の上で重要な指標になっている。海外で一般的に使われており、社会保障政策の国際比較がしやすくなるとされる。日本の社会支出は1.5%増の110兆4541億円で過去最高だった。支出割合は高齢者向けが欧米勢の30%前後に比べて47%と突出して高く、子ども向けなどの「家族」の支出は5.5%にとどまった。
社会保障財源のうち、公費負担は初めて40兆円を超えた。財源に占める割合は過去50年で最高の35.7%に達した。少ない現役世代で高齢者を支えきれず、公的保険制度で賄いきれない部分を公費で補っているためだ。
社会保障給付費:医療などの自己負担を除いて税金や保険料で賄った費用の総額